クラウドPBXと既存PBXを併用するハイブリッド構成とは?SBC活用による多様な「先進クラウド連携」と段階的DXの進め方

企業のDX推進が加速する中、既存PBXをクラウドPBXへ移行することは避けられない課題です。しかし、既存資産の制約や全社的な業務停止リスクから、一括での移行を躊躇する企業は少なくありません。

本記事では、この課題を解決する最適な選択肢であるハイブリッド構成に焦点を当てます。特に、レガシー環境と最新のIP網・先進クラウドサービスとの接続課題を解決するキーテクノロジー、SBC(Session Border Controller)の役割を徹底解説。SBCを活用することで、「移行を止めない段階的DX」を安全に実現し、TeamsやZoom、携帯内線といった多様な先進クラウド連携をどのように実現できるのかを具体的にご紹介します。

目次

1. 導入:なぜ今、既存PBXとクラウドPBXの併用(ハイブリッド構成)が最適解なのか?

クラウドとの共存

企業にとって、電話インフラの刷新はDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要なステップです。しかし、長年利用してきたオンプレミスのPBXをクラウドへ移行する際、多くの企業が「一度に全てを入れ替えるリスク」に直面しています。この課題を解決する現実的なアプローチが、ハイブリッド構成の採用です。

1.1. 「IP網への完全移行」が迫る!「レガシーPBXの接続互換性」という課題の本質

通信事業者の電話網は、従来のPSTN(公衆交換電話網)からIP網へと大きく切り替わっています(出典:NTT東日本 固定電話のIP網移行後のサービスについて)。多くの既存PBXは、このIP網に対応するためにIP電話インターフェースを備えていますが、問題は接続先が多様化する中での互換性にあります。

従来のPBXは、特定の環境下での安定稼働を前提として設計されてきたため、キャリアやサービスベンダーごとにIP電話インターフェースの実装に特有の仕様がある場合、NTT東西以外の特定の電話会社や、先進的なクラウドPBXサービスと接続しようとした際、プロトコルの差異により通信が確立できない、といった技術的な課題に直面することがあります。

これは、システム維持に関わる喫緊の接続課題を意味します。この多様化するIP通信時代におけるプロトコル間の調整役として、SBCの必要性が高まっています。

1.2. 完全移行をためらう企業が注目する「移行を止めない段階的DX」という選択肢

PBXの更改は、全社的な業務停止リスクや巨額な初期コストを伴うため、多くの企業が一括での移行を躊躇します。特に、数年単位の保守契約が残る既存資産を直ちに廃棄することは、財務的にも非効率です。

そこで注目されるのが、既存資産を活かしつつ、必要な機能から順次クラウドへ移行する段階的DXです。このアプローチには、以下の重要なメリットがあります。

  • リスクの最小化
    システムを一斉に入れ替える際の障害リスクを、段階的な導入により分散・最小化できます。
  • 効果の早期実現
    クラウドPBXの強み(例:リモートワーク対応、スマホ内線化)を、全社的な移行完了を待たずに、特定の部門や機能から先行して実現できます。

ハイブリッド構成は、この「移行を止めないDX」を可能にし、レガシーとクラウドの間の安全な橋渡しをするための強固な基盤となります。

1.3. 関連キーワードの解説:「PBXとは」「クラウドPBXとは」

「PBX」や「クラウドPBX」といった基礎的な用語について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。導入検討の前提知識を深めることができます。

また、御社のPBXの法定耐用年数「6年」が迫っている、または既に超えているなら、それはビジネス継続に関わる重大なサインです。次世代への最適な移行戦略を検討するために、以下の関連記事で以下の3つの重要課題を徹底的に学べます。

  • 【重大リスクと経営判断】
    法定耐用年数超過による致命的な事業継続リスク(故障・部品サポート終了)と、減価償却を含む複雑な会計処理の基本、そして最適なリプレイス時期を決める経営判断の指針。
  • 【コスト最適化と最新環境】
    高騰する保守費用・電気代の具体的な削減額、固定資産を持たないことによるROA・キャッシュフローの劇的な改善、そして常に最新機能を利用できるクラウドPBXへの移行ステップ。
  • 【基礎知識・失敗しない選び方】
    「オンプレミスとクラウドの違い」などの前提知識から、コスト、機能性、セキュリティを徹底比較した、御社に最適なクラウドPBXの選び方。

【関連記事】PBXの法定耐用年数・リスク・会計処理を解説!クラウドPBXへの移行と選び方

2. クラウドPBXと既存PBXを併用するハイブリッド構成の基本とメリット

固定電話を収容する既存PBXとスマートフォンも子機に利用できるクラウドPBXとの併用

2.1. ハイブリッド構成の仕組み:クラウドとオンプレミスを繋ぐ接続パターン

ハイブリッド構成とは、既設の既存PBXとクラウドPBXを、SBCなどを介して連携させ、一つの内線網として機能させる形態です。これにより、既存の資産と新しい機能を同時に運用できます。

2.2. 併用が必要となるケース:段階的移行と特定拠点・部門での先行導入

ハイブリッド構成が選ばれるのは、以下のようなリスクやコストを抑えたい場合です。

  • 段階的移行
    既存PBXのリース期間や耐用年数に合わせ、時間をかけて移行していく場合。
  • 特定機能の先行導入
    営業部門だけスマホ内線化やTeams連携を先行導入し、効果を検証する場合。

2.3. 併用による5つのメリット(既存資産活用、通話料削減など)

ハイブリッド構成は、一般的に以下のようなメリットをもたらすことが期待できます。

  • 既存資産の活用
    高価な既存のビジネスフォン端末をIP網接続後も活用できる。
  • コストとリスクの分散
    一度に全てを入れ替えるコストや、システム障害のリスクを分散できる。
  • 通話料の削減
    クラウドPBX側からの発信により、通話コストが抑えられる可能性がある。
  • 業務の継続性
    移行期間中も業務を止めずに電話環境を維持できる。
  • BCP/DR対策の強化
    クラウド連携により、災害やパンデミック時にも通信手段を確保できる。

3. 併用(ハイブリッド構成)の鍵:SBCによる「接続互換性の維持」と先進クラウド連携

3.1. VoIPゲートウェイ/SBCとは?プロトコル調整による接続互換性維持の役割

VoIPゲートウェイはIP網への橋渡しを担いますが、SBCはさらに高度な機能を提供します。SBCは、IP-IP間通信におけるプロトコルの特異な実装や設定の差異を吸収し、「接続互換性」を維持する「プロトコル調整役」としての役割を担います。

例えば、Microsoft TeamsやZoom Phoneを既存の電話網と接続するには、それぞれが要求する独自の技術仕様(通信のルール)に正確に対応する必要があります。SBCは、こうしたサービスごとのルールの違いを吸収し、通信を中継・調整する役割を果たします。

この「調整役」としての機能が、次のセクションで解説する先進クラウドサービスとの連携の核となります。

3.2. SBCのもう一つの重要な役割:先進クラウドPBXや携帯内線サービスとのシームレスな通話接続

SBCは、企業の通信環境を最新化する上で不可欠な存在です。

特に、Teams PhoneやZoom Phoneといった先進クラウドPBXと、既存PBXや携帯内線通話サービスを連携させる役割です。携帯内線通話サービスは、携帯電話をオンプレPBXやクラウドPBXの内線端末として利用可能にするメリットを提供しますが、SBCが介在することで、以下のようなシームレスな内線通話を実現します。

  • Teams Phoneユーザー ⇆ 既存PBXやクラウドPBXの固定内線端末・スマホ内線端末
  • 携帯内線電話 ⇆ 既存PBXやクラウドPBXの固定内線端末・スマホ内線端末

この柔軟な連携によって、企業は既存資産を維持しつつ、携帯電話を内線端末として利用できるメリットを享受できます。

3.3. NX-B5000 for Enterpriseの優位性:世界的な先進クラウドサービスへの迅速な対応力

当社のNX-B5000 for Enterpriseは、SBC製品の中でも、TeamsおよびZoomといった世界的な先進クラウドPBXにいち早く対応してきた実績があります。レガシーPBXの接続互換性を維持するだけでなく、将来的に導入される可能性のあるAIサービスや先進的なコミュニケーション基盤との連携を見据え、企業の音声DXを確実に前進させる基盤を提供します。

【 NX-B5000 for Enterprise接続イメージ 】

NX-B5000 for Enterprise 接続イメージ

さらに詳しい内容については、『NX-B5000 for Enterpris』のサイトをご覧ください。

4. 移行完了後の音声DXへ:SBCが切り拓く将来的な拡張性とBCP/DR対策

クラウドPBXでDXの実現に向かう

4.1. 段階的DXのロードマップ:既存PBXを活かしながらクラウド機能を全社展開する流れ

SBCの活用により、企業は既存PBXの延命とクラウド機能の先行導入という二つの戦略を並行できます。既存PBXの耐用年数に合わせて段階的にクラウドへの移行範囲を広げ、最終的に既存設備を撤去するまでのロードマップを柔軟に設計できます。

4.2. NX-B5000 for Enterpriseが担保するAIサービスやデータ連携による音声DXへの将来的な拡張性

NX-B5000 for EnterpriseがTeamsやZoomといった最先端のプラットフォームと連携していることは、その技術的な柔軟性と拡張性の証明です。SBCは、通話のメタデータ(発着信時刻、通話時間など)を中継・制御する機能を持っているため、将来的に導入されるAIによる音声分析サービスや業務システムとのデータ連携においても、その基盤を担うことが期待されます。これは、単なるPBX移行に留まらない、真の音声DXへの扉を開く鍵となります

4.3. BCP/DR対策にも活用!パンデミックや災害時を想定したクラウド連携の価値

SBCを介してクラウドと連携しているハイブリッド構成は、BCP(事業継続計画)の観点からも極めて有効です。パンデミックや大規模災害時でも、クラウドPBX側へ通信を自動で振り分けることで、社員は自宅やサテライトオフィスからスマートフォン内線を通じて業務を継続することが可能になります。

5. 併用(ハイブリッド構成)導入で検討すべき2つのデメリットと対処法

課題を工夫により対処するためのヒント

5.1. VoIPゲートウェイ/SBC導入の初期コストと、その後の運用費用対効果

SBCの導入には、初期コストや設置工数が発生する場合があります。この費用は、既存資産の延命、移行リスクの回避、そして将来的なDXによる業務改善といったリターンと照らし合わせ、総合的な費用対効果で判断することが重要です。

5.2. 既存PBXとクラウドPBXの二重コストを最小限に抑える方法

ハイブリッド構成では、既存PBXの保守費用とクラウドPBXの利用料が並行して発生します。この二重コストはデメリットですが、SBCを活用して既存PBXの延命期間を明確にコントロールすることで、二重コストが発生する期間を最小限に抑え、計画的な移行を実現できます。

6. まとめ:ハイブリッド構成の成功は「SBCによる接続課題の解決」から始まる

ハイブリッド構成は、NTT網のIP網移行という大きな流れの中で、既存資産を最大限に活かしつつ、移行リスクを最小化してクラウドPBXのメリットを享受するための現実的かつ戦略的な選択肢です。この移行を成功させる鍵は、レガシーと先進クラウドの双方と円滑に連携し、DXの基盤となり得るSBCの選定にかかっています

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