結論からお伝えすると、クラウドPBXは特定の対策を講じることで、停電時でも電話業務の継続が可能です。
従来のPBX(ビジネスフォン)が停電時に機能停止するのに対し、クラウドPBXはBCP対策(事業継続計画)としても非常に有効です。
この記事では、クラウドPBXが停電時に利用できる仕組みから、万が一の災害に備えるための具体的な4つの対策、さらにはBCP対策として最適な理由を徹底解説します。電話業務の継続に不安を感じている企業の方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 停電したらどうなる?従来の電話とクラウドPBXの違い
従来のPBX(ビジネスフォン)が停電時に機能停止するのに対し、クラウドPBXは特定の対策を講じることで継続利用が可能です。ここでは、一般的な電話や従来のPBXが停電時にどうなるかを確認し、クラウドPBXとの違いを見ていきましょう。
1.1. 一般的な固定電話(アナログ回線)
家庭などで使用されるアナログ回線の場合、電話機自体に電力が不要なタイプであれば、停電時でも電話回線が生きていれば通話が可能です。これは、電話回線自体がNTT局舎側から微弱な電気(給電)を受けているためです。ただし、ACアダプターを使う多機能電話機などは利用できません。
- 補足:IP網移行後の注意点
2024年以降、NTTの固定電話網はPSTNマイグレーション(IP網への移行)が進んでいます(出典:NTT東日本・「固定電話」の今後について)。移行後の「メタルIP電話」サービス(既存のアナログ回線を利用)は、多くの場合、引き続きNTT局舎側からの給電(停電時通話)に対応しています。しかし、光回線を使ったIP電話サービスでは、停電時には外部からの給電がないと利用できません。今後は停電時にも使える固定電話は減少していく傾向にあり、企業における電話のBCP対策の重要性は高まっています。
1.2. 従来のPBX/ビジネスフォン(オンプレミス型)
オフィスに主装置を設置する従来のPBX(ビジネスフォン)は、原則として停電時には使えなくなります。
- 停電で使えない理由
会社の固定電話は、電話回線に直接繋がっておらず、社内に設置された主装置(PBX)を経由しています。主装置がオフィスの電力で動いているため、停電で給電が止まると主装置が停止し、結果として全ての固定電話が使えなくなります。 - 注意点
一部の機種には停電機能付きの専用電話機がありますが、接続できる台数が限定的です。
1.3. クラウドPBX
クラウドPBXは、サーバー側はベンダーのデータセンターにあるため、停電の影響を受けません。したがって、電話システム自体は稼働し続けます。
問題は、オフィスに設置された端末(IP電話機やPC)が使えるかどうかです。これらの端末とインターネット接続に必要なルーター類が停電で停止すると、クラウドPBXの機能を利用できなくなります。
裏を返せば、端末と通信手段に電力が供給されていれば、クラウドPBXは停電時でも利用できるということです。
- 補足:停電時の着信挙動の違い
「停電時に電話をかけてきた相手(お客様)にどう聞こえるか」は、ビジネスの機会損失を防ぐ上で非常に重要なポイントです。
従来のPBXの場合
社内の主装置が停止するため、電話は着信しません。発信者には「プープー(話中音)」が流れるのみとなり、お客様は「電話が繋がらない」と不安を感じたり、他社へ流れてしまうリスクがあります。クラウドPBXの場合
オフィスの電話機が止まっていても、クラウド上のサーバーは生きています。そのため、後述する「スマートフォンの内線アプリ」や「留守番電話(ボイスメール)」へ自動で転送したり、「ただいま電話に出ることができません」といった自動音声を流すことが可能です。 これにより、停電中であってもお客様との接点を維持し、機会損失を最小限に抑えることができます。
2. クラウドPBXを停電時も利用するための「4つの対策」
クラウドPBXのメリットを最大限に活かし、停電時も電話業務を継続するための具体的な対策を4つご紹介します。
2.1. 対策1:内線化したスマートフォンを活用する
クラウドPBXの最大の強みは、社員のスマートフォンを内線化できる点です。
オフィスが停電した場合でも、社員のスマートフォンはキャリアのモバイルデータ通信(4G/5G)を利用するため、オフィスの電力やインターネット回線の状況に影響を受けません。
自宅や避難先など、場所を選ばず会社代表番号での発着信や内線通話が可能になります。 これが、停電による電話業務停止を避ける最も効果的な方法であり、BCP対策の核となります。
内線化したスマートフォンの活用について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
【関連記事】クラウドPBXスマホアプリのBYOD活用術!できることと導入要件
2.2. 対策2:UPS(無停電電源装置)を導入する
停電時にIP電話機やPC端末、WiFiルーターなどを引き続き利用したい場合は、UPS(無停電電源装置)の導入が必須です。
- UPSの役割
停電を検知すると瞬時に電力を供給し、一定時間、機器を動作させることができます。 - メリット
停電時にもオフィスの通信環境を維持できるため、スマートフォンだけでなくIP電話機なども含めたクラウドPBXの機能を完全な状態で利用できます。
2.3. 対策3:テレワーク環境を整備し業務継続性を強化する
クラウドPBXは、電話帳などのデータが全てクラウド上のベンダーサーバーに保管されています。これは、被災による物理的破損の心配がないことを意味します。
BCP対策として、社員がオフィスに出勤できない状況(交通機関の麻痺など)に備え、クラウドPBXを活用したテレワーク環境を平時から整備しておくことが重要です。これにより、場所や状況に左右されずに事業継続を可能にします。
2.4. 対策4:ダウンタイムをなくす「自動着信転送」機能を活用する
クラウドPBXの核となる機能の一つが、「着信転送」機能です。これは、かかってきた電話をあらかじめ指定した別の電話番号や端末へ自動で振り分ける仕組みです。この機能の活用は、ビジネスの継続性と顧客体験の維持に不可欠な役割を果たします。
着信転送機能には、柔軟な設定が可能で、ブラウザ上のシンプルな管理画面からいつでも簡単に行うことができます。この利便性のため、万が一、オフィスでの停電や回線障害が発生した場合でも、通話可能な担当者の携帯電話や別の拠点へ瞬時に着信を転送する設定にしておくことで、お客様からの大切な連絡を逃すことがありません。
これにより、緊急時でも「電話がつながらない」という状況を防ぎ、顧客接点を維持しながら、事業継続性(BCP)を高めることが可能になります。
3. クラウドPBXが災害時・BCP対策に最適な理由
クラウドPBXは、従来のPBXが抱える災害時の課題を解決し、企業のBCP対策を強固にします。
3.1. 理由1:オフィスが被災しても電話業務が止まらない
内線化したスマートフォンを活用できるため、オフィスが停電・被災し、社員が出勤できない状況でも、自宅やサテライトオフィスから会社の電話業務を継続できます。従来のPBXのように「出勤しないと電話が取れない」という問題を根本的に解消します。
3.2. 理由2:重要なデータがクラウドで守られる
従来のPBXでは、電話帳などのデータは社内の主装置に保管されていました。主装置が破損すると、データの復旧が困難でした。
クラウドPBXでは、全てのデータがベンダーのクラウドサーバーで安全に保管・管理されています。オフィスが被災してもデータが守られるため、事業継続の不安が軽減されます。
3.3. 理由3:被災後の事業復旧・移転が迅速に行える
従来のPBXは、主装置の設置工事やデータ復旧に時間とコストがかかります。
クラウドPBXは物理的な主装置が不要なため、万が一オフィスが被災し、別の場所へ一時的に移転する場合でも、回線とインターネット環境さえあればすぐに電話業務を再開できます。復旧・移転作業を迅速に行える点は、企業の命綱となります。
4. 【Q&A】停電が予定されている場合の事前準備
計画的な停電や災害に備えて、事前に確認・実施しておくべき事項をご紹介します。
4.1. 準備1:UPSの動作確認と充電状況のチェック
UPSを導入している場合は、必ず動作確認を行い、バッテリーが満充電状態であることを確認しましょう。使用可能時間も把握し、停電時間に合わせて業務の優先順位を決定しておきます。
4.2. 準備2:固定電話・PC端末の電源オフと回線の切断
停電前には、IP電話機やPCなど電源を必要とする機器の電源をオフにすることを推奨します。また、ルーターやPBX主装置(ハイブリッド型の場合)についても、可能であれば電源を切り、回線を物理的に切断しておくと安心です。復電時に予期せぬ過電流(サージ)が発生した場合の機器の故障を防ぐことができます。
5. まとめ:クラウドPBXで強固なBCP対策を実現
クラウドPBXは、「スマートフォン内線化」と「データのクラウド保管」という特性により、停電時や災害時においても電話業務の継続を可能にします。
従来のPBXが抱えていた「停電時に使えない」「オフィスに出勤しないと電話業務ができない」といった課題を解決し、企業のBCP対策を飛躍的に強化します。
電話業務を含めたBCP対策を見直したい企業にとって、クラウドPBXは最適なサービスです。万が一の事態に備え、今すぐ導入を検討しましょう。
【PR】災害に強い電話環境を構築しませんか?
「オフィスの停電対策を強化したい」「BCP対策として、スマホ内線や自動転送を導入したい」
ネクストジェンの「U-cube voice」なら、万が一の災害時でも事業を止めない、強固な通信環境を構築可能です。現在の環境におけるリスク診断や、最適なBCPプランについて、お気軽にご相談ください。