固定電話番号をそのままクラウドPBXに!ナンバーポータビリティの全条件と移行手順、継続を実現する3つの方法

「クラウドPBXを導入したいけれど、今の固定電話番号が使えなくなるのが不安だ...」

このように考える企業のご担当者様は非常に多いはずです。名刺やWebサイトに記載している会社の電話番号を変更することは、ビジネス上、大きなリスクと手間を伴います。

しかし結論から申し上げますと、現在お使いの固定電話番号の多くは、クラウドPBXに移行しても「そのまま」使い続けることができます。

本記事は、固定電話番号の継続を検討されている方のために、以下の情報を徹底解説する決定版ガイドです。

  • なぜ番号を変えない方が良いのかという経営的な理由
  • 番号を継続するための3つの具体的な方法(ローカルナンバーポータビリティ、ゲートウェイなど)
  • 最新の双方向ナンバーポータビリティ制度を踏まえた移行条件

この記事を読めば、貴社に最適な移行方法がわかり、安心してクラウドPBX導入のステップに進めるはずです。

目次

1. なぜ固定電話番号をそのまま使うべきなのか?(企業・経営視点のメリット)

笑顔でお客様応対をする女性オペレータ

クラウドPBXの最大のメリットはコスト削減と利便性ですが、それ以上に「電話番号を変えないこと」には、企業の存続に関わる重要なメリットがあります。

1.1. 顧客・取引先への信頼維持とビジネス機会の損失回避

長年利用してきた電話番号は、企業の「信頼の証」であり、一種のブランドです。安易に番号を変更すると、「会社が移転した?」「事業を縮小したのか?」といった誤解を取引先に与えかねません。万が一、連絡が取れなくなった顧客は離脱する可能性が高く、ビジネス機会の損失は計り知れません。既存の番号を維持することは、企業としての信用と安心感を顧客に提供し続けるための必須条件です。

1.2. 既存の名刺や広告物などの修正コストをゼロに

電話番号を変更すると、その番号を記載している全ての資産を修正しなくてはなりません。社員の名刺、封筒、請求書、Webサイト、各種広告媒体、屋外看板などです。

これらを全て変更・刷り直すための時間とコスト(デザイン費、印刷費、人件費)は莫大です。番号をそのまま維持できれば、これらの修正コストをゼロに抑えることができます。

2. クラウドPBXで「電話番号そのまま」は可能?結論と継続の3つの方法

現在の固定電話番号をクラウドPBXで使い続ける方法は、主に以下の3つです。

方法メリットデメリット適しているケース
1. ローカルナンバーポータビリティ(LNP)機器不要、コスト削減、完全クラウド化一部の番号・緊急呼で利用不可ほとんどの企業(推奨)
2. ゲートウェイ(GW)利用LNP不可の番号も継続可能、緊急呼利用可能費用や管理の手間が増えるLNP不可、または緊急呼が必要な場合
3. 転送サービス最も手軽に導入可能通話料が二重にかかるあくまで一時的な利用

2.1. 方法1:ローカルナンバーポータビリティ(LNP)による移行

クラウドPBXを利用するためにLNPを使って電話番号を継続しつつ電話会社を変更する方法

番号ポータビリティとも呼ばれるローカルナンバーポータビリティ(LNP: Local Number Portability)は、現在契約している通信事業者から、固定電話番号を乗り換え先のクラウドPBX事業者のIP電話網に直接移行する方法です。これにより、従来の回線契約は不要となり、通信コストが一本化され、完全なクラウド環境が実現します。これが最も一般的な移行方法であり、推奨される手段です。

なお、LNPの詳しい情報は、総務省のウェブサイトでご覧いただけます(出典:総務省 固定電話の番号ポータビリティ)。

2.2. 方法2:ゲートウェイ(GW)による継続利用

ゲートウェイを用いて電話会社と電話番号を維持したままクラウドPBXを利用する方法

LNPが利用できない番号や、特定の回線(FAX専用回線など)を物理的に残したい場合に採用される方法です。専用の機器や仕組みを使い、既存の電話回線とクラウドPBXサービスを接続します。LNPが使えない場合の現実的な代替策となります。

2.3. 方法3:転送サービスによる一時的な継続

急いでクラウドPBXを利用するため、電話の着信転送機能を利用する方法

既存の固定電話回線を解約せず、「ボイスワープ」などの転送機能を利用して、クラウドPBXで取得した新しい番号へ着信を転送する方法です。最も手軽ですが、旧回線契約の費用と、転送による通話料が二重にかかるため、コスト面から見てあくまで一時的な措置として推奨されます。

3. 【詳細比較】「ゲートウェイ方式」の2種類とLNPとの違い

ゲートウェイとLNPの違いはなにか?

LNPが利用できない場合や、特定の要件がある場合に検討すべきゲートウェイ方式を詳細に解説します。

3.1. (GW-1)宅内に機器を設置する物理ゲートウェイ方式

既存の電話回線終端に、VoIPゲートウェイ(VoIP-GW)という物理機器を設置し、音声信号をインターネット通信(IP信号)に変換してクラウドPBXに送る方式です。

  • メリット: 既存のレガシー回線(アナログ、ISDN)を活かせる。緊急呼(110/118/119)の利用が可能
  • デメリット: 機器の購入・設置費用、維持管理の手間、既存回線費用とクラウドPBX費用の二重払いが発生する。
  • 適しているケース: LNPが絶対に不可能な番号の場合、または携帯電話の電波が不安定な場所など、固定電話機での緊急連絡が必要な場合
  • 3.2. (GW-2)宅内機器が不要な「ゲートウェイ代行」方式

    クラウドPBX事業者が、クラウド環境内でゲートウェイ機能を代行する仕組みです。

    • メリット: 宅内に物理機器が不要なため、機器の購入費や設置・管理の手間が一切かからない。
    • デメリット: 提供事業者が限られる、利用できる回線の種類が限定される場合がある(主に光回線)。
    • 適しているケース: LNPはできないが、機器の設置や管理の手間は避けたい企業

    4. 【最重要】LNPの適用条件と使える番号

    4.1. LNPが可能な電話番号の条件

    かつてLNPは、NTT東西が発番した番号に限られていましたが、2025年1月から始まった固定電話番号の双方向ナンバーポータビリティ制度により、適用範囲は大きく拡大しています。

    4.2. LNP可否の判定に必要な2つのポイント

    LNPの可否を判定するために必要なポイントは、主に以下の2点です。

    • 地域番号(市外局番)であること:
      「03」「06」など、市外局番を含む固定電話番号(地域IP電話番号を含む)であること。
    • 乗り換え元・先の事業者が双方向LNP制度に加盟していること。または、加盟事業者から電話番号の卸を受けていること:
      LNPは番号の発番元事業者や乗り換え前後の事業者がこの制度に加入しているかが重要です。双方向LNPに加盟する事業者間、あるいは加盟事業者から番号の卸提供を受けているクラウドPBX事業者であれば、IP電話事業者で発番された番号であってもポータビリティが可能です。

    出典:NTT東日本 固定電話サービス提供事業者間における双方向番号ポータビリティの開始について

    双方向LNP参加事業者(NTT東西、KDDI、ソフトバンクなど18社)の情報は、NTT東日本など各社の公開情報で確認可能です。クラウドPBXプロバイダがどの事業者の番号を利用しているかも確認しましょう。

    4.3. LNPができない電話番号の種類と代替策

    以下の番号は、現在の制度ではLNPの対象外となります。

    • 050から始まるIP電話番号: LNP制度の対象外です。
    • 0120/0800から始まる着信課金番号: LNPではなく、「着信課金番号ポータビリティ」という別の制度が適用されます。
    • 他地域への移転: 固定電話番号は法令により物理的な所在地と紐づく番号のため、異なる市外局番の地域へ移転する場合は継続利用できません

    4.4.【最重要リスク】LNPで緊急呼(110/118/119)が利用できなくなる理由

    多くのユーザーは携帯電話で緊急呼を利用するため問題ないと判断しますが、LNPによるクラウドPBXへの完全移行の際、緊急呼の利用ができなくなる可能性があるという、非常に重要なリスクがあります。

    これは、IP電話サービス(クラウドPBX)で提供されるスマホアプリやPCソフトフォンからの発信が、現在いる場所(発信地域)を厳密に特定できないために生じる法令上の制約です。緊急呼は、その番号が紐づく地域から発信されることを前提としているため、発信地域が固定できないクラウドPBXのスマホ向け通話アプリサービスを提供する多くのプロバイダでは、法令上、緊急通報の取り扱いができません。

    • LNPのデメリット: 既存回線を解約するため、緊急呼が必要な場合に利用できる「固定電話回線」が社内から消滅します。
    • LNPが適さないケース: 携帯電話の電波が届きにくい山間部や地下、あるいは企業のBCP(事業継続計画)上、社内の固定電話機から確実に緊急連絡を行いたい場合は、LNPではなく宅内GWを設置し、既存回線を維持する選択肢を強く推奨します。

    5. 電話番号をそのまま移行する際の手順と費用(LNPを主軸に解説)

    LNPを導入する手順と費用

    5.1. LNP移行の全体フロー(事業者選定→申請→切替)

    LNPを用いたクラウドPBXへの移行は、概ね以下の流れで進行します。

    • 事業者選定と相談: クラウドPBX事業者に対し、LNPを希望する旨を伝え、番号がLNP可能か確認してもらう。
    • LNP申請手続き: 事業者が現契約事業者へ書類提出等の手続きを代行する。
    • 工事日調整と切替: 移行元(現事業者)と移行先(クラウドPBX事業者)の間で調整し、指定日時に番号を切り替える。

    なお、LNPの移行期間の目安は、書類の不備や現契約内容の複雑さにより変動しますが、おおむね半月〜2ヶ月を目安とする事業者が多く見られます。スムーズな移行のために、余裕をもって準備を進めましょう。

    5.2. LNP移行にかかる「費用」の種類と内訳

    LNP移行には、クラウドPBXの初期費用とは別に以下の費用が発生する可能性があります。 LNP手数料: クラウドPBX事業者へ支払う番号移行のための手数料(数千円程度)。

    6. 【制度改正】双方向ナンバーポータビリティがクラウドPBX導入にもたらすメリット

    双方向ナンバーポータビリティは、クラウドPBXを検討する企業にとって大きな安心材料となりました。

    6.1. 双方向ナンバーポータビリティとは?制度の概要

    双方向LNPとは、2025年1月に開始された制度です。従来のLNPは、NTT東西が払い出した固定電話番号をそれ以外の固定電話サービス提供事業者に番号ポータビリティすることができても、NTT東西以外の固定電話サービス提供事業者が払出した固定電話番号の番号ポータビリティができませんでした。

    従来のLNPが「一方通行」だったのに対し、各固定電話サービス提供事業者が払い出した固定電話番号を継続して利用しながら、他の事業者を選択できるようになり、番号の持ち運びが自由になったことを意味します。

    6.2. 法人にとってのメリット:クラウドPBXの選択肢拡大とリスク低減

    この制度により、企業は「NTT東西以外の固定電話番号を新規に契約すると、電話会社を変更する際、電話番号も変わってしまう」という番号の変更リスクを心配する必要がなくなりました。

    将来的に事業環境やニーズが変わった際にも番号を維持したまま、通信サービスを柔軟に乗り換えられるようになったため、様々な電話会社の固定電話番号を取り扱うクラウドPBX導入のハードルが大きく下がりました

    7. まとめ:最適な継続方法を見極めるチェックリスト

    最後に、貴社がとるべき最適な行動を確認しましょう。

    7.1. LNPができる場合の推奨フロー

    コストメリットが最も大きく、機器管理が不要なLNPによる完全移行が最善です。そのため、LNP対応のクラウドPBXを選定し、すぐに移行手続きに入ることをお勧めします。

    7.2. LNPができない場合の推奨フロー

    機器の管理が不要でコストを抑えられるゲートウェイ代行をまず検討し、対応サービスがない場合にのみ物理GW方式を検討します。つきましては、クラウドPBX事業者に、現在の番号で利用可能なゲートウェイ方式を確認することから始めましょう。

    7.3. U-cubeサービスならスムーズなLNPを実現!

    貴社の固定電話番号がLNP可能かどうか、煩雑な手続きをどう進めるべきか、当社にご相談ください。当社はLNPに関する豊富な実績を持ち、お客様の状況に合わせた最適な継続方法をご提案し、移行手続きを全面的にサポートいたします。

    ネクストジェンのクラウドPBX「U-cube voice」なら、場所を選ばずにスムーズに業務を進められる環境が整い、ビジネスの柔軟性が大きく向上します。
    LNPとゲートウェイどちらにするか迷われている方は、ぜひ、両方をサポートする「U-cube voice」の機能や導入事例をご覧ください。

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